ドケチの神髄

メンターである伯父の薦めにより、新卒で入社したのは大企業の人事部であった。

まずは、大企業の合理的な経営手法を勉強してこい、しかも本社に入れば、中枢のやり方をすべて学べるというアドバイスに従ったのだ。

財閥である○友の不動産会社の人事部。


そこでは合理的な経営、徹底した能力主義、1円のムダも許さないコスト管理を見た。

400年以上も存続できる財閥グループの企業文化のスゴさを身をもって体験した。


中でも、コスト管理の徹底ぶりには驚嘆した。


実は、この会社はROEにおいて、上場企業で2位になったこともある。

株をやらない方のために説明すると、ROEとは株主資本利益率のこと。

※ROE(株主資本利益率)=1株あたりの利益(EPS)÷1株あたりの株主資本(BPS)


わかりやすくいうと、1株あたりで、どれだけ儲けられるか。

もっと、わかりやすくいうと、少ない投資でどれだけの利益を上げられるかだ。

この指標で上場企業2位である。


その秘密は、1名あたりの社員が稼げる金額が大きいこと、

もう一方で、コスト管理を徹底することだ。


コスト管理でいうと、ものすごい徹底ぶりだった。

■社内の封筒は使い回し

■裏紙を使う

こんなことは、どこでも普通にやるし、当たり前だと思う。


■コピー機の前には、紙がはってある

「そのコピーが本当に必要かどうか、もう一度考えよ」と。

■その横のシュレッダーの前にも紙が貼ってある

「ホチキスは絶対に外してからシュレッダーせよ。刃が磨り減るから」と。

■電話機の受話器には、シールが貼ってある。

「要点をまとめてから受話器を取り、1分半以上会話するな。もし、どうしても1分半以上話すようなら、一回切って、相手にかけ直させよ」と。


こんなことは、普通だったらバカにするような小さな金額の積み重ねだが、

年月とともに大きな差がついていく。それよりも、一種の社員教育なのかもしれない。


もちろん、もっと大きな視点でのコスト管理も徹底していることは言うまでもない。

そもそも、コスト削減という言葉があるが、日頃からコスト管理している会社には、そんなものは必要ないのだ。


上場企業で、このとおりである。

起業したばかりの会社や中小企業、ベンチャー企業でも、

本来は徹底してコスト管理をすべきだろう。


ただ、勘違いされると困るから言っておくと、

起業家もこういうことを全部やったほうがいいと推奨しているわけではない。

コスト感覚がなさ過ぎて、失敗する起業家もいるから警告を発する意味で書いた。

特に内装工事などは惚れ込んで多額の投資をしないように気をつけたい。


ただ、注意点としては、相手があるコストで、ゴリゴリと適正価格を下回ったところまで

値切り倒すことは、感心できない。三方良しの精神も大事だ。適正な対価だったら、気前よくポンっと払うのも、経営者として大事なことだと思う。


いずれにしても、少ない資本で、きちんと利益を生み出せるか、

ビジネスモデルを考え抜かなければならない。


中野 裕哲 - Hiroaki Nakano        - オフィシャルブログ